1.はじめに
開業をされる際に多額の支出が発生することは明らかですが、その中には「医療機器の購入代」も含まれています。
この金額は開設する診療科によって大きく異なりますが、基本的には数百万円から数千万円となっており、決して少額とはいえない金額です。
そんな医療機器ですが、導入の方法としては大きく分けて「購入」と「リース」の2つがあります。
購入の場合は一時に大きな投資が必要になるため、多くの自己資金が必要となるだけでなく、金融機関等からの借入れが必要となることもあります。また、分割払いを選択したとしても、それは実質的に代金の一部を借入れているだけにすぎないため、利子等がかかることは当然あります。リースの場合は、この後者によく似ています。
このことから「購入の場合の分割払いとリースは同じなのではないか?」という疑問が出てきますが、そもそも「購入」と「リース」は大きく異なる部分が多々あります。
今回はこの両者の違いについて明らかにするために「リースの特徴」について述べ、開業時にどちらの方法で医療機器を導入すべきかについて検討していきたいと思います。
2.リースとは
(1)リースとは
「リース」とは、「商品を購入する」のではなく「商品を借入れる」契約であり、当該商品の所有権はリース会社にあります。このため、契約期間(以下「リース期間」という。)が終了した際には商品を返却することが一般的であり、無暗に借入れた商品を改造したりして特別仕様にすることは基本的には禁じられています。また、中途解約は原則として不可能なので、リース期間を満了するまでは保有する必要があります。さらに、残価保証の設定がされているのであればその価値を期間満了まで保持する必要があり、価値が残価を下回ってしまった場合には「リース資産売却損」として費用を計上するとともに差額を支払う必要があります。
以上をみると、リースを採用することはデメリットが多いように感じるかもしれませんが、デメリットばかりなのかといったらそんなことはなく、「イニシャルコストを軽減できる」等の大きなメリットがあります。
(2)リースのメリット
① イニシャルコスト(=導入コスト)を軽減できる
リースを利用することで、支出は毎月に定められたリース料を支払うのみになるため手許に大きな資金を用意する必要がなくなります。
これにより、開業の敷居を低くすることが可能となります。
② リース期間ごとに最新の機器を利用できる
リースにより医療機器を導入するのであれば、その所有権はリース会社が有することになります。このため、リース期間満了時等には当該機器をリース会社に返却することが一般的ですが、これはデメリットのように見えて大きなメリットになります。
リース期間が満了する度に機器を返却するのであれば、その都度「最新の機器」を借入れることが可能になります。機器を一度購入してしまうと購入した機器は長期にわたって使用し続ける必要があるので、時の経過により変化する状況に対応しきれないことがあります。しかし、リースであればリース期間という比較的短期な期間で機器を更新することが可能になりますので、その状況に対応できる可能性が高まります。
したがって、機器の購入における分割払いと比較したときに「リースのメリットは何か?」という問いに対しては「機器を更新しやすい」という回答をすることができます。
3.購入か?リースか?
(1)自己資金を十分に有する場合
自己資金を十分に用意できるのであれば、購入におけるコスト面の問題が生じないため「購入」という選択肢を入れても良いかもしれません。しかし、購入する際にはその購入する機器が容易に最新版に更新できるかどうかを確認する必要があります。上記2.(2)②で挙げたメリットにある通り、一度購入してしまえばその機器を長期にわたって使用する場合が多くなります。このため、特に更新の多い機器に関しては「リース」を選択した方が良い場合があります。
(2)自己資金が少なく、購入する際に資金の借入れが必要な場合
自己資金が少なく借入れが必要な場合は、購入だけではなくリースも活用することをおすすめします。すべての機器をリースに頼る必要はありませんが、購入する機器が多くなれば借入金が増え、その額が大きければ大きいほどリスクの高い経営が求められることになります。また、手許には医業を回していくために一定の現金預金等を有する必要があり、自己資金を機器の購入のために使い切ることは避けなければなりません。
よって、自己資金が少ない場合においては特にリースを活用することを検討しなければなりません。
4.まとめ
今回は医療機器の導入方法について「購入」と「リース」を比較しました。
購入する場合には医療機器を自院に合わせたものに仕様変更できるというメリットがありますが、機器によっては更新が容易ではない点や多額の資金が必要である点等のデメリットがあります。一方、リースをする場合には購入の場合のデメリットがメリットとなり、所有権が移転せず仕様変更ができない点がデメリットとなります。
よって、「医療機器に関してこだわりを有するかどうか」等により導入方法の選択が異なることになり、また、自己資金が少ない場合にはリースを活用した方が良いということになります。