「適正な経費」のポイントは「事業性」

税務についての原理原則は、医療機関と他の業種と差があるわけではありません。適正な税務、最適な節税を行って、健全な発展のために必要な利益を確保する必要があります。

そこで、何が適正な経費であるかということですが、とくに問題になるのは接待交際費です。
ドクターというのは、接待されることがあっても、なかなか接待する側になる立場ではないでしょう。
「ゴルフをやって、ドクター同士の情報交換会をしている」と言っても、それが毎週となるとどうでしょうか。

高級クラブ通いにしても、問題は金額ではなくて、業務との関連性です。いくら「大学病院の先生との打ち合わせ」といっても、それが毎週となるとなかなか苦しいです。

また、開業医なのに、やたら新幹線や飛行機に乗って定期的に頻繁に遠隔地で出かけていると目立ってしまいます。学会や開業セミナーに出席するために新幹線を使った場合には、その学会のチラシなど、実際に行った証拠を提示する必要があります。

車については、一人のドクターが往診用の車を2台所有していると、これは問題になる可能性があります。車については事業用部分と個人用部分の比率を分ける必要があり、大体50パーセントくらいにしているわけですが、それが2台あると百パーセントになってしまうからです。

女医さんの場合は、ベビーシッター代が経費になるかどうかという問題があります。目的によって経費に入るケースもあれば、経費に入らないベビーシッター代もあると考えられます。
とにかく経費の入れすぎには要注意です。

「適正な経費」のポイントは「事業性」

奥様の専従者給与は、個人か医療法人かで違います

個人事業主の場合、まず奥様がクリニックで働いておられれば、専従者給与を支払えます。ただしきちんと出勤管理を行う必要があり、「不当に高い」給料は払えません。

お子さんについては、学生であれば専従者にはあたらないので給与を支払うことができません。

しかし医療法人であれば、18歳以上のお子さんを理事や監事になり経営に携われば、経営陣としての給料を払えます。お子さんに適正な報酬を支払えば、所得税は累進課税ですから節税効果が大きくなります。

奥様の専従者給与は、個人か医療法人かで違います

医療法人は、生命保険料を損金に計上できる

また医療法人であれば、生命保険料を損金に計上できるので生命保険を利用した節税を行うことができます。
クリニックの継続のためには、支払いのために必要な運転資金などのプール金の標準保障額が、計算式によって算出されます。それに加えて、ドクターの場合は将来高額な教育費を支払うために蓄えが必要なケースが少なくありません。

ドクターはいざという時のために、一般の人よりもたくさんのお金を準備しておく必要があるわけです。
生命保険料もたいへん高額になります。

そこで医療法人にしておけば、保険料を経費とすることができるので非常に有利です。後継者に将来、クリニックを手渡す場合にも、医療法人であればとてもスムーズに承継させられます。

ところで、開業医が会計事務所を選択する時に注意しなければならないことがひとつあります。

医療法人成りの手続きは複雑で手間がかかるので、あまりやりたがらない会計事務所もあるということです。しかしある程度の医業収入が入るようになると、医療法人にしたほうが税務的にかなり有利になりますから、そうした医療法人化についての手続きに詳しい会計事務所に税務を依頼したほうが、節税対策の自由度が高くなるでしょう。医療法人化も経験豊富な弊社母体の税理士法人浅野会計事務所にお任せください。

医療法人は、生命保険料を損金に計上できる

税務調査の頻度が異なる理由

税務調査は7年に一度くらいの頻度で入るよう目安にしていると聞いたことがあります。しかしずっと来ないクリニックもあれば、頻繁に調査を受けているクリニックもあるようです。

税務署は、KSKというシステム使って、売り上げや経費の暦年変化をチェックしています。毎年毎年同じような売り上げや経費の比率のクリニックにはあまり税務調査はありません。大きな比率の変化があったり、同じ診療科で他のクリニックと比べて経費の比率が大きく異なっていれば、引っかかります。 それが、クリニックによって調査頻度が異なる理由だと思います。

税務調査の通告は、税務署から税理士のところに、何月何日に税務調査に入らせてくださいと電話がかかってきます。基本的に税務署がクリニックへ直接電話をすることはありません。

当日は朝10時に、税務署の調査官が1人または2人で、クリニックにやってきます。調査は午後4時ごろまでかかります。夏場は少し長くなるかもしれません。夕暮れまでに署に帰るようにしているようです。個人事業主の場合は一般的に1日で終わることが多く、医療法人の場合は規模にもよりますが2日くらいかかることが多いです。

税務調査の頻度が異なる理由

税務調査で聞かれること

調査で聞かれるのは、先生のプロフィール、クリニックの開業日、診療の流れ、従業員のタイムカードの確認、在庫の確認、レセコンのチェックなどで、個人事業主の場合は書類を税務署が持ち帰ることが多いです。個人事業主は事業性が法人よりも薄いと考えられているからです。

税理士は調査に同席して、税務署の調査官とドクターのやり取りの「通訳」を行います。税務調査で確認されるのは、日々の仕事の流れがきちんと帳簿に落とし込まれているかどうかです。

税務署は、架空給与が払われていないかどうか確認するために、辞めた従業員に連絡を取って実際に従業員が存在するかどうかチェックすることもあります。ですから、おかしなことは最初からしないほうがよいのです。

それ以外は、医療機関の場合は把握が比較的容易なので、他の業種のような反面調査はあまり行われないようです。

税務調査で聞かれること

適正な税務かどうかをチェックしているだけ

個人事業主の場合は2~3週間後に税務署から税理士に電話がかかってきて、追加の質問があったり、結果について税理士からドクターに報告することになります。

税務申告に問題があるという結果になれば、所得税や住民税を修正申告しなければなりません。3~5年分の調査をしますから、中には否認される経費が数百万円を超えるケースがあります。そうすると累進課税なので修正税額がかなりの金額になってしまうこともあるのです。

税務調査は、納税者にとってあまり楽しいことではありませんが、税務調査をきっかけにしてより正確な帳簿作成と適正な税務申告を行うことにより、それによってさらに業績を伸ばされるケースも数多くあります。

税務調査の場でよくお話しするのは、税務調査官はお金を取りにくるのではなくて、適正な税務を行っているか公的な立場から事業経営の確認をしているだけということです。税務署との見解の相違によって多少の増差税額が出てしまうこともありますが、まじめに帳簿を付けている人は何も恐れることはありません。

適正な税務かどうかをチェックしているだけ

税理士の交渉力で運命が分かれることも

経費について税務署が見ているのは、事業性があるかどうかです。レシートを見れば、家族と旅行に行くための費用だったり、彼女とデートするための費用だったりした場合には分かりますから、否認されてしまいます。正しい税務申告を行うように、日ごろから注意しておけばよいでしょう。

ちゃんと事業と関連している経費であれば、解釈の違いについて税理士は税務署の調査官と交渉することができます。あくまでも事業と関連した経費は、経費として申告することはおかしなことではないはずです。

ドクターとしては、できる限りの節税(医療法人化も含めて)を行いながら、払うべき税金をきちんと払って、将来を見据えて資産を形成していくべきです。ご子息がおられる場合ですが、医学部に入るための教育資金は、ドクターにとって大きなテーマです。

資産形成は順調なクリニック経営があって初めて成り立つものです。経営指導能力に長けた税理士かどうかでかなり結果が変わってくるかもしれません。 税務・会計のことなら弊社母体の税理士法人浅野会計事務所にお任せくださいませ。

税理士の交渉力で運命が分かれることも

すべてはドクターのために。

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