「クリニックを始めようにも人がいない!」~開業時の人手不足に備えて~

はじめに

クリニックの開業に向けて、
場所を決め、資金を集め、書類を作成し、
「開業まであと少し!」と思いきや、

「あれ?私以外働く人がいない……」

こんなことになっては本末転倒です。
もちろん院長先生が1人でクリニックを回していくことも考えられますが、多くの場合は異なります。
一緒に働いてくれる方が周りにいるのであれば問題ないですが、
仮にいなかったとしたら、これからどう動いていけばよいのでしょうか。

ということで、今回のテーマは「人材確保」です。

どんな人を雇うべき?

(1)経営をするうえで必要な役割を担う人

クリニックを経営していく中で、それを医師一人で回していくことは難しく、患者様の対応や情報管理をする受付、事務、看護師、看護助手等の様々な役割を担った人と協力することでうまく回せるようになります。
クリニック経営ではこの連携プレーが大切になり、これを実現することで効率よく業務を行うことができるようになります。

ですが、この役割を担う人材は誰でもよいのかといったらそんなことはなく、それぞれの役割を担える条件をクリアした人を採用することになります。

例えば、「受付」はクリニックの顔となる大切な役割であり、ネット上の口コミには「先生の対応は素晴らしかったけど受付の態度がひどかった」といったようなことが書かれることもあり、クリニックの評判そのものに影響を与えます。
このため、仕事として必要最低限のことしか行わない人を受付として採用することはナンセンスであり、患者様の気持ちを考えて行動できるような人を採用することが必要になります。

また、「看護師」は受付等とは異なり資格が必要になります。このため、資格を有する人を採用することが最も大切になりますが、看護師もまた受付同様にクリニックの顔ともなる存在ですので、応募者を面接等の際にしっかりと見極めることが必要になります。

以上のように、経営の中で必要となる役割を担う人を雇うことは重要となりますが、その役割は大変重いものであると理解したうえで採用活動をすることが大切となります。

(2)経営の目的を達成するために必要な人

クリニックを開業されるということは、先生方には何らかの想いがあるのではないでしょうか。

開業に至るまでに多くの経験を積まれ、「これだけは大切にしていこう」という考えを実現すべく、クリニックの開業を検討されたのではないでしょうか。

開業に至った経緯は様々であると存じておりますが、経営をしていくうえでの理念は必ずお持ちであると思います。

このため、これから採用をしていく人については、この考え方に対する理解を示してくれることが必要となります。

これに関してはケースバイケースではありますが、先生方とは異なる考え方を持つ人を採用してしまうと、働き始めてから意見の食い違い等が生じ、せっかく採用したのに短期で退職してしまうなんてことも考えられます。
特に開業後しばらくは試行錯誤を繰り返して経営をしていくと思いますので、その時期から考え方の異なる人を入れてしまうのはリスクがあるといえるでしょう。

よって、経営の目的に理解のある人を採用することが大切となり、これに関してはどの業界、どの時期においても同じことがいえます。

市場の現状

まずは診療所という市場の現状を見ていきましょう。
平成29年度における求人倍率については、診療所(有床)で0.73倍、診療所(無床)で1.13倍と、市場は売り手の状態となっています。※
また、以下のグラフは診療所における就業者(看護師)数の推移を表しますが、近年では横ばいとなっています。
参考:『医療経営士サブテキスト ヘルスケア業界データブック2021』

上記のように、人材確保が厳しい状況が続くクリニックですが、その中で人を雇うとするならばどのような方法を取るのが良いのでしょうか。

※e nurse center「平成29年度ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人に関する分析報告書」
https://www.nurse-center.net/nccs/scontents/NCCS/html/pdf/h29/229_5.pdf

どのように雇うの?

(1)応募者を集める

クリニックは開業前に、「オープニングスタッフの募集」というものを行います。
開業後のクリニックを0から共に作り上げていく大切な仲間になりますので、上記でも述べた通り、人数だけを確保すれば良いわけではありません。その人がどういう人なのかをしっかりと見極める必要があります。

しかし、市場の現状からして応募者が十分に集まるとは考えにくく、応募者一人一人が大切な宝物となります。また、募集については、広告なしで人を集めるのは困難であり、他の会社が運営する採用サイト等を利用することが必要になります。近年ではオンライン上で就職先を探す新卒者・転職者が多く、そこで利用されるサイトはいくつかに絞られてきます。
このため、人材確保のためにもある程度の資金を用意しておく必要があり、開業前後においては特に広告宣伝として投資をする必要があります。

では、応募者を集めることができたとして、その人たちの採用の可否はどのように決定していくのでしょうか。

(2)採用可否の決定

応募者の人数には当然限りがありますので、「少しでも気に入らないところがあれば即不採用」ということは避けた方が良いのかもしれません。また、上記において採用する人の理想像を述べましたが、実際にはある程度の妥協ラインを設けるべきです。

その採用の方法として考えられることにはどのような方法があるのでしょうか。

その方法としてまず考えられるのは、採用試験では必ずといっていいほど行われる「面接」です。
提出書類を参考に選考することは言うまでもないですが、書面だけでその人の中身を知ることは困難ですので、面接は可能ならば行うべき過程になります。
(最近ではオンライン面接もよく行われています。)

次に、「筆記試験」を行う法人もあるでしょう。
専門知識というよりかは一般的な知識を問うような出題の仕方をするパターンが多いです。
SPIを採用するケースが比較的多いでしょうか。

その他にも、グループディスカッションやプレゼンテーション、課題提出といったような多様な形での選考によってその人の考え方等を理解しようとする方法によっても行われています。

このため、採用に要する時間をなるべく少なくしたいのであれば書類選考や面接が有効的な方法となりますが、限られた時間の中で応募者の内面をより知りたいのであれば他の多彩な方法を取り入れてみてはいかがでしょうか。

まとめ

開業に向けての作業は急ピッチで進められていきます。
人手が足りないことは問題ではありますが、時間がないからといって採用する人を甘く選定してしまえば、せっかく開業しても患者様からみたクリニックの第一印象が悪くなり、今度は患者様がいなくなってしまいます。

人材を募集する上では、「どのような人を採用したいのか」という対象を明確にする必要があります。
明確にした後は、「その人にはどのような広告で興味を持ってもらえるか」「選考方法として何を行えばその人を見抜けるのだろうか」といったことを検討し、ミスマッチのない採用をしていくことを目指しましょう。

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