開業時に紙カルテではなく電子カルテを選択する理由とは

はじめに

☆☆前回のコラムはこちらから(レセプトの電子化について)☆☆

カルテ(診療録)は医師にとって必須のアイテムであり、患者さんに医療を提供する際に使用されます。患者さんの個人情報を含め多くの情報を書き込むことができ、医師は主に診療内容を記入します。このカルテですが、現在では大きく分けて紙カルテと電子カルテの2種類が存在しており、PC上でも入力できるようになっています。

ここで時折話題とされるのが、「電子カルテの普及率」についてです。現状では過半数の医療機関で電子カルテが採用されていますが、まだまだ普及しきっていないのが現状です。

これから開業される先生方が疑問に思われる点としては、「紙か電子、どちらにしたらいいの?」ということではないでしょうか。ですが、過去に開業された先生方の多くは電子カルテを選択しており、「電子カルテ一択!」という状況が続いております。

全体の電子カルテ普及率は6割ほどなのに、なぜ新規開業の場合は電子カルテ採用率が高いのでしょうか。
今回はこれについて明らかにしていこうと思います。

電子カルテの普及率

厚生労働省のホームページを参照すると、令和2年における電子カルテシステムの普及率は、400床以上の一般病院で91.2%、一般診療所で49.9%、一般病院及び一般診療所全体では50.4%となっています。
また、200~399床の一般病院では74.8%、200床未満の一般病院では48.8%となっていることから、規模の小さい医療機関であればあるほど普及率は低くなっていることがわかります。

以下に電子カルテシステムの普及率の推移を表したグラフをお示しします。

電子カルテのメリット・デメリット

次に電子カルテのメリットとデメリットを整理していきたいと思います。

まずメリットについてですが、主に以下の2点が挙げられるのではないでしょうか。

① 業務の効率及び幅の拡張
電子カルテを用いることで、患者さんの情報を電子データとして管理できるようになります。
これにより、複数の医療従事者が同時に情報を閲覧すること等が可能となり、業務の効率を向上させることができます。
また、初めから電子データで保存することができるため、データの分析等を行うことが可能となります。
よって、業務の効率や幅を広げることができる点でメリットがあるでしょう。

② カルテの保存場所を必要としない
カルテは、医師法第24条及び歯科医師法第23条により5年間の保存義務が設けられています。
この保存方法に関しては、厚生労働省の「診療録等の保存を行う場所について(平成14年通知)」により規定されており、一定の基準を満たす場合に限り電子媒体による外部保存を可能としています。
当該基準についてはカルテの管理方法に関するものであり、主に真正性、見読性及び保存性からなる電子カルテ3原則の確保が求められています。

このようにカルテは外部保存が可能であることから、院内にカルテを保管するスペースを全く設けなくてよいというメリットがあります。
なお、紙カルテの外部保存も可能とはなっていますが、「必要に応じて直ちに利用できる体制を確保しておくこと」が求められているため、紙カルテを瞬間移動させる方法がない限り、カルテは医療機関の近くに置かざるを得ない状況にあります。

次にデメリットについては以下の4点を挙げたいと思います。

① 情報セキュリティ上の問題
ネットワークを利用する以上必ず考えなければならないのは情報セキュリティについてです。
カルテには患者さんの個人情報が詰まっているわけですから、情報漏洩や滅失が起こってしまうことはあってはならないことです。
紙媒体での内部保存であれば直接的な脅威(盗難等)に対応すればよかったのですが、電子データでの保存となれば、それに加え間接的な脅威(ウイルスによるデータ破壊等)にも対応しなければなりません。

② 停電等の臨時的事象への対応
電子データとして情報を扱っていくわけですから、停電等が起こってしまえば当然カルテが使えなくなってしまいます。特にそれが大規模の地震等の災害によるものであれば、保存先のサーバーが壊れて情報がなくなってしまう恐れもあります。
このため、全国に分散させてバックアップを取っておく等といった対応が必要になります。

③ イニシャルコストやランニングコストの発生
電子カルテを導入するには当然コストがかかります。
導入時に発生するイニシャルコスト(=導入コスト)だけでなく、月々発生するランニングコスト(=運用コスト)も考慮していかなければなりません。

当該コストはクラウド型の電子カルテを利用することで大幅に削減することが可能です。
また、イニシャルコストは少し高額になるものの、レセコンと一体となっている電子カルテも存在しており、互換性等を気にせずに利用することも可能となっています。

④ 医師等による操作上の問題
これは紙カルテから電子カルテへ移行する際に起こる問題ですが、紙カルテに慣れている医師にとって電子カルテへの移行は抵抗が生まれる可能性があります。
また、電子カルテにするということは作成方法をある程度統一させる必要が出てくるのも事実です。
このため、すでに開業されている医療機関で電子カルテへの移行を実現させようとすると、この問題を乗り越える必要が出てきます。

新規開業医が電子カルテを選択する理由

電子カルテを採用する理由としては、以下の3点が考えられるでしょう。

① 業務が効率化されるから
これはメリットの部分でもご紹介しましたが、電子カルテにすることで複数人が同時に閲覧することが可能になり、レセプトとの連携をすることもできるため非常に便利なツールとなっています。
電子カルテは「デメリットさえなければ導入しない理由はない!」といえる代物なのではないでしょうか。

② デメリットに対応できるから
これは新規開業する場合に限ることではありますが、1からのスタートになりますので、デメリット④(医師等による操作上の問題)といった問題が起こりにくいという理由が考えられます。
また、セキュリティ等の問題に関しては、常に注意しておく必要はあるものの、今や電子カルテは9割以上の大病院が導入していることからもわかる通り、安全性はある程度保障されているのではないかと考えます。

③ 補助金があるから
我が国においては電子カルテの導入を推進している動向にあるため、現在では「IT導入補助金2022」という補助金があり、コストの一部を補助してもらえる形になっています。
ただし、必ずしも申請が通るとは限らないため注意が必要です。

まとめ

新規に開業される場合、電子カルテ導入のメリットがデメリットよりも大きいために電子カルテが採用されているといえそうです。
特にクラウド型の場合は本来数百万円かかる導入費用を数万円まで引き下げることが可能ですので、コスト面での心配もご無用です。

今や多くの場面でITが活用されている中でも、電子カルテの導入は業務効率を大きく変えてくれる素晴らしいものですので、ぜひご開業の際にはご検討ください。

一覧

すべてはドクターのために。

思援メディカルサポートは、
安心して相談できる税理士事務所医院開業コンサルタント会社です

お問い合わせ CONTACT

お問い合わせならびに無料相談会を受付しております。
まずは、お気軽にお問い合わせください。