はじめに
今回取り上げるのは保険医療機関から支払基金へのレセプト請求についてです。
2015年4月から当該請求についてはオンラインか電子媒体の請求が原則となっていますが、現状はどのようになっているのでしょうか。
以下、社会保険診療報酬支払基金様のホームページを参考にお伝えしていきます。
【参考URL】
https://www.ssk.or.jp/index.html
電子レセプトによる請求状況
上記のグラフは2022年2月処理(支払基金)のレセプト請求状況を表すものですが、オンラインと電子媒体を合わせて「電子レセプト」という括りとなっています。このため、医科においては97%、歯科においては91%、調剤においては98%が電子レセプトによる請求となっており、電子レセプト化が進んでいることがわかります。
しかし、電子レセプトの内訳をみると医科、歯科、調剤では大きく異なっており、特に医科と歯科ではオンラインと電子媒体の比率が逆転しています。いったいこれにはどのような背景があるのでしょうか。
医科と歯科、オンラインと電子媒体
医科ではオンライン、歯科では電子媒体が主流となっていますが、これには理由がありそうですよね。
理由を考える前に、まずはオンライン請求と電子媒体請求について説明します。
オンライン請求は、データのやり取りを全てオンライン上で行う請求方法です。このため、レセプトに関しては全て電子データとして一元管理することができ、パソコン1台ですべて完結させることが可能です。また、搬送時の破損や紛失といった問題を解決することができます。
一方、電子媒体請求は、光ディスク(CD-RやMO)などの電子媒体を利用して行う請求方法です。
一見するとオンライン請求の方が良さそうに思うかもしれませんが、歯科においては電子媒体が主流となっています。
「なぜ?」
この理由について考えていきましょう。
まず一番初めにレセプト請求のオンライン化が原則とされたのは2008年4月であり、2009年11月からは電子媒体による請求も認められました。また、例外措置も規定され、一部の医療機関では2014年度末まで猶予されることとなりました。
日本医師会の場合は、ORCAプロジェクトというものが設立されている関係で、2002年にはすでに「日医標準レセプトソフト」がオープンソースとして公開されています。このため、すでにこの時点でオンライン化の準備が整っていたといえるのではないでしょうか。
2008年4月時点では病院の電子レセプト普及率(施設数ベース)が33.9%であり、2010年4月時点では94.6%と一気に普及できていることがわかります。
一方、日本歯科医師会の場合は、医科のORCAプロジェクトを模索し2010年2月に「レセック」というレセコンASPサービスを開始しましたが、レセプト請求のオンライン化が原則とされた後であったこともあり、医科のように普及させることはできませんでした。その間レセコン業者がバージョンアップを行ったことや費用対効果の問題が考慮され、電子媒体が広がることになったのではないでしょうか。
2008年4月時点では歯科の電子レセプト普及率(施設数ベース)が0.0%であり、2010年4月時点では3.7%と普及率が医科と比べかなり低いことがわかります。なお、2011年4月時点では26.1%、2013年4月時点では47.2%と高くなっていますが、医科と比べると普及の遅れが表れているといえます。
まとめ
ここまで電子レセプトについて述べていきましたが、現在では電子レセプトがかなり普及していることはご理解されたと思います。ですが、カルテの電子化に関してはまだまだ進んでおらず、普及率は6割ほどとなっています。
同じ「電子化」といっても、電子化するメリットが大きいものでないと人は動きません。
おそらく「紙カルテの方が使いやすい」ことや「紙カルテで十分」という理由で普及が進んでいかないのだと思いますが、確かに「何でもかんでも電子化する」という考えは一度捨てて、「電子化するメリット」について院内で検討していく必要がありそうですね。